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さにあらず物語 [Story]



 帰るべき場所を求め、彷徨い続ける一匹の犬がいた。
 もう旅は終わりに近づいてる。
 その雄犬は、自身の成り行きをじっと待つかのように街角に佇んでいた。
 すると、眼鏡をかけた一匹の雄猫がふいに目の前に現れ、きっと睨めつける様な眼差しでこう言った。
 「おまえは猫だ。」
 投げ捨てるように言葉を吐き出すと、さっと身を翻し裏路地に体を滑り込ませ消えていった。
 「おいっ、ネコ!」
 一瞬、その言葉の意味を理解しようと思考した隙に、その眼鏡のネコは視界から消えてしまい呼びかけは届かない。
 いったい、どういう意味なんだ? どこから見たって俺は犬じゃないか?
 おかしな猫もいたもんだ・・・。


 それから暫く経ったある日。
 陽もとっぷりと暮れた街角で、屋台でラーメンをすする眼鏡ネコを見かけた。
 奴だ。
 実はあれから・・あの猫に言われた事がどうにも気になっていた。
 急いでその屋台に駆け寄り、眼鏡のネコに声をかける。
 「おい、ネコ。」
 「ありゃ、なんですか突然。 あなたもラーメン食いたいですか?」
 「いや、そうじゃない。 覚えてるか? 俺だ。」
 「あぁ、アンタね。 ・・・猫・・・なんだよな。」
 「そ、それなんだ。どうして俺が猫なんだ、おいっ。」
 「アンタは気付いてないだけ。 もう猫に近づいてるのさ。」
 「だから、それじゃ意味がさっぱり分からないじゃないか!」
 猫舌のくせに熱いスープをすっかり飲み干した眼鏡のネコは、落ち着いた様子でこう言った。
 「ついて来るかい?」

 どのくらい移動しただろう。
 何回か壁をよじ登り、足を滑らせながら屋根を伝い、体毛をむしり取られながらも割れた塀の隙間をすり抜けてきた。
 前を行く眼鏡のネコは苦も無くどんどん進んで行くが、やっとの思いでついて行く・・・。
 ったく、猫じゃないんだ、俺は・・・。
 「ほら、ここだ。」
 少しだけ開いている扉の隙間から、ノックもせずにスルリと中に入ってく猫。
 辿り着いた小さな部屋からは楽器の音が聴こえてきた。
 「ギターだ、アコースティックの。」
 いや、まだまだ。こりゃシロートだな・・・。
 犬にはギターの心得があったので、その技量の検討はついた。
 すると、今度は唄が聞こえて来た・・・。
 部屋の片隅で一匹の美しい雌猫がギターを抱え、唄っているのが見える。
 その姿は一見するとただの「お遊び」のひとつの様だったが、その唄声の中には、何かを訴えるような特別な響きも吐き出していた。

 一心不乱にギターを鳴らし唄い続ける雌ネコには、犬の姿など見えてない様だった。
 暫くの間黙って見ていが、犬は思い切って声をかける・・・。
 「おい、ネコ。 君は一体ナニがやりたいんだ?」
 「あら」
 突然声をかけられた雌猫は、一瞬驚きの表情を見せ唄を止めた。
 「なんですか?」
 「あ、いや、ナニがやりたいんだ? と思って・・・・。」
 「わかりません。 自分の歌を唄ってるだけです。」
 そっけなく答えるその声には、明らかに何か自信めいたものがあった。 と同時に、その演奏には隠し切れない「不安」も同居しているのを犬は感じ取っていた。
 「ほう、なるほど。 で、どこで唄うんだ?」
 「いえ、それは何処でもいいんです。 表に出て見たいんです。」

 「どうです? やってみませんか?」
 振り返ると、眼鏡の猫が嬉しそうに立っている。
 「しかし、俺は犬だ。 猫と一緒には出来ないものなのだ。」
 あきれた表情を見せながら、眼鏡の猫はこう言った。
 「それは問題ありません。」
 「何が問題ないんだ? 『にゃあ』とは言えんぞ。」
 「あはは、それは簡単なことですよ。」
 「だから、簡単に『にゃー』とは言えないし、ゴロゴロも鳴らなんぞ!」 
 「いやいや、猫になればいいんです。」
 「ゐ? ね、猫・・・にぃ ?」


 ある日・・・
 街角で唄う二匹の猫がいた。
 取り囲む見物客の中から、ギターを演奏する雄猫に声がかかった。
 「あ、あんた・・・。 間違ってたらすまんが、たしか犬じゃなかったかい?」
 「然に非ず。 猫である。」 
 いつの間にか、犬は猫になっていた。

 「さ、行ってみるか!」
 「にゃぁ!」
 帰るべき場所を探してた猫になった犬。
 表に出ようとしてしていた猫。
 二匹の冒険はいよいよ始まった。

 ※フィクションです(笑)

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